感想と妄想

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イベスト「呪い屋と孤月のコンチェルト」読了後の気持ち整理日記

相変わらずネタバレばっかりなので、知りたくない方は絶対読まないでください。
あと、いつも以上に中身はありません。

 

 ※     ※     ※ 

 

イベスト「呪い屋と孤月のコンチェルト」を読みました。
ファウスト先生が「自分が悪者になってジョシュアの憎しみを一人で引き受ける」選択をしたのは、書いてある通り「ジョシュアのテオへの友情を美しいまま守ってあげたい」というファウスト先生の願いによる自己犠牲だなと読了直後は思ったんですよ。
勿論、ジョシュアの月に対する憎悪を弱めなければ彼自身がその感情によって肉体も蝕まれてしまうので、彼の怒りや憎しみを他に向ける必要があったのは確かだし。
わかるよ、そんな汚れ役は陰気な呪い屋の僕にぴったりじゃないか、とか思ってんでしょ?(一方その頃レノックスはといえば、そんなファウスト先生にぴったりな猫ちゃんカップケーキを買っているのであった…)
そうやって悪役ぶってもその根底には自分が信じてそして失った「魔法使いと人間との友情」をどこかで信じたい気持ちがあるんだろうなって。

 

しかしその後しばらくしてから「だが、待てよ」と思いまして。
ジョシュアはそれでいいの?
これはその時ふせったーにも書いたんですが、ファウスト先生は自分で納得しての選択だろうけどジョシュアはそれで真実を知ることなく、これからずっとファウスト先生を憎み続けるのはダメじゃないです?
ファウスト先生がそこまでジョシュアの人生に責任を持つ必要はないと言われればそうかもしれない。
でもこの事件に関わってしまった時点でもうジョシュアの心の一番大切な部分に踏み込んでしまったんですよ、ファウスト先生。
たった数十年しかない人間の生涯の中の短くない時間(もしかしたらその後の人生ずっと)を他者を憎みながら生きるなんて不幸じゃないですか。
真実を知る事でもっとジョシュアが傷つく可能性もあるし、本当の事は信頼できる仲間だけがわかっていればいい、というのも理解はできるんですけど理解と納得は違うので。
それに目の前で起きた出来事だけに囚われた感情と、複雑な因果関係を知った上での感情はその消化過程で心に及ぼす影響も違うのでは?と思うんですよね。
ファウスト先生、自分だって苦しい日々を過ごした経験があるんだからそこはもう少しジョシュアに寄り添って接しても良かったのでは?
でもそれが「東の魔法使いになること」なのでしょうか。

 

思えばこのスタンスって中央の魔法使い(オズは除く)に対しても同じですよね。
中央の国の歴史の暗部を知る当事者でありながら、真実は自分の中に収めて子供達には何も知らせない。
それはファウスト先生の優しさでもあるけど、偽りの歴史を信じて魔法使いと人間が仲良く暮らせる世界を創りたいと思うアーサーや、それを聖ファウスト様のように支えたいと思うリケに対して誠実なのか?というと心から是とは言い難いんですよね、私は。
わかるんですよ、ファウスト先生が受けた酷い仕打ちを思うとそこまで求めるなよというのも、そんなことしても無駄に中央の若い魔法使い達を傷つけるだけだというのもね。
でもね私、ファウスト先生には若者を導く指導者として夢見てる部分もあるので、そこはあと1段上って欲しい!ただのお気持ちだ!!!

 

話が逸れました。
そんなこんなでその日は眠れぬ夜を過ごした(寝ました)んですけど、1日過ぎて思ったんですよ。
ファウスト先生ってもしかしてそこまで他者を憎んだことないんじゃないの?って。
人間は嫌いだし、中央の国も嫌い、でも多分別に憎んではいないですよね?
そう思って「向日葵」読み直したんですよ。
そしたらもうしょっぱなからレノックスと言い合ってるじゃないですか、「きみは人を憎むのに向いていない」「あなたこそ」って。
そうなんですよ、ファウスト先生は親友に裏切られ火刑に処されても尚、心からアレク様の事憎んではいなかったんじゃないんですか?
勿論絶望はしただろうし、一時的に怒りや憎しみは抱いたかもしれないけど、そんなに長続きはしなかったのでは。
そう、清純な心ってそんなに簡単に変わったりしないんですよ。
ファウスト先生は魔法使いのテオと友情を築いたジョシュアの中にもそんな清らかさを見出していたのでは。
だからジョシュアもファウスト先生の事を憎んだとしても、それよりもテオとの友情の思い出が心を慰撫し、やがて憎しみも薄れると思っているのかなぁ、と。

あらやだ、前日に「その後の人生ずっと憎みながら生きるかも」なんて思った自分の心が狭くて恥ずかしい。

ジョシュアがその後どうなったかはおそらく今後語られることはないだろうし、全部お前の妄想だろと言われればそうなんですけど、私はそれでファウスト先生の選択については納得できた気がします。

とはいえ、中央の国の歴史については「自分さえ黙っていればそれでいい」という話でもないと思うので、このまま有耶無耶にはしないで欲しいんですよね(しないとは思うけど)。
ファウスト先生には厳格で高潔であれ!とつい思ってしまうので、私が。
夢を…壊さないで…。

 

なんかね、「醜い感情を赤裸々に描くことが人間描写の深さ、リアリティ」みたいな感覚がここしばらくコンテンツ界に蔓延しているじゃないですか。
私もそういう表現自体を否定する気はないし、それによって面白い作品は沢山あると思うんですよね。
でもそれに自分の心まで毒されてしまって疑い深くなってしまったり何でも悪い方向にばかり妄想してしまうのは考えものですよね。
という2日間に渡る私の気持ち整理の記録でした。