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【わりとシリアス】流星かける橋のラプソディ感想

「流星かける橋のラプソディ」読みました。
7話辺りから既に泣きそうになって…泣いてしまいました。
ストーリーの美しさ・優しさに感動したのはそうです。
でもそれだけではない様々な感情が自分の中で後から後から沸き上がってしまい、その日はTwitterでもほとんど感想を言うことなく就寝したのですが、翌日もふと思い出すと涙がジワっと溢れそうになり(仕事してください)、こんなことは犬バラ以来だったので自分でも気が付かないうちにとても心揺り動かされてしまっていたようです。

何故?とてもいいお話だったのに。
その部分が自分でも上手く整理できなくて言葉にするのにとても時間がかかりました。
でも、自分は何が辛くて、何を悲しいと思うのか、たまにはそこを深堀りするもいいかなぁ、と思って。
なので今回は割とシリアス調の感想文です。
…そうでもないか???

 

※     ※     ※ 


このイベスト、これまで曖昧だったアーサーが北の国に捨てられた事件の前後にかなり踏み込んでいて、個人的に「どうなっていたんだろう?」と思っていたことが色々判明してスッキリした部分はあります。

主に以下の点ですね。
①アーサー失踪の経緯はどの範囲(人・内容)で認知されているのか
②アーサー遺棄に至るまでの王妃様の背景
③アーサー失踪後の宮廷(主に国王陛下)の対応
④橋のスポエピについて
⑤グランヴェル王宮における魔法(魔法使い)への理解
今までふんわりとした情報しかなかったのでより鮮明にイメージすることができ、また
それによってとても考えさせられてしまいました。
以下、その新情報とそれに付随する感想です。

 

アーサー失踪の経緯はどの範囲(人・内容)で認知されているのか
pash!感想でも書いたのですがアーサーが北の国でオズに育たられたことは「国家機密」にも拘らず、「宝剣」では賢者の独白として「誰でも知っている」とされ、一体どうなっているんだ?と思っていたのですが、範囲が広がるにつれて公開されている情報が絞られていっている感じなのですね。そりゃそうか。
アーサーが行方不明になったことを最初に知ったのは(おそらくアーサーが魔法使いだったことを当時知っていたのも)王族と一部の重臣とアーサーの近侍のみ。
そしてその中でも限られた王族と重臣だけが王妃様がアーサーを捨てたという真実を知っている。
その中にアーサーの家庭教師だったヘイガルさんは含まれていない。
一番広域な認識が「行方不明だった王子が1000年に一度の奇跡で発見され帰還した」ということ。
これは③にも繋がる話なので、そこでもう少し述べたいと思います。

 

アーサー遺棄に至るまでの王妃様の背景
王妃様、読者に評判悪いよね。

我が子を捨てた母親なので嫌われて当然と言えば当然なのですが。
でも私は考えれば考えるほど、どうしても彼女だけを憎み責める気持ちになれないんですよね。
グランヴェル国王に嫁ぎ王妃となった若い女性。
初めて産んだ子供が王子で、当初は周囲からの祝福も絶大だったと思われます。
それがその子が成長するに従い人々に恐れられる魔法使いだと判明、周囲から責められ心を病み、遂にはその子供を遠く離れた雪山に捨てるように家臣に命じてしまう。
ざっくりとした経緯はこれまでのストーリーでわかっていましたが、今回はヘイガルさんの口から語られた王妃様への周囲からの嫌がらせがエグかった。
わかる、わかりますよ、何しろこれまで数多くの宮廷絵巻ストーリーを摂取してきた私の精神の宮殿にはあらゆる事例が保管されていますから。めっちゃ想像が膨らむ。
「心を病んだ」と一言で書かれていますが、部屋に引きこもりがちで限られた侍女としか接しないというのはなんとなくうつ状態なのかと思われます。
また、グランヴェル城スポエピではラルヴァの変化したヒバリをアーサーだと思い込んでおり、妄想に囚われた状態でもありました。
これはラルヴァの呪いによるものとも考えることもできますが、今回のイベストでアーサー失踪の原因として「魔法で鳥に変身して飛び立った」説があったと判明したので、これは「そうであって欲しい」という王妃様の罪の意識から来る現実逃避がそのまま妄想にすり替わってしまったのかなぁと。(まさかこんな形でスポエピを拾ってくるとは)現実と妄想の境界が曖昧になってるというか。
更にアーサーが中央の国に戻って以降、顔を見て名前を呼んだことがないというのもそもそもアーサーの事認識できていないのでは?
とにかく強烈に精神を病んでいますよね。
心を病んだ人について「1人で思い詰めてしまう前に周囲の信頼できる誰かに相談したり頼れなかったのか?」って言う人よくいるけど、それができれば心を病んだりしないのよ。
王妃様も孤独だったんですね…。
そして現代のようなメンタルケアやサポートの概念がなさそうなあの世界で、王妃様が陥った不幸が全て彼女の心の弱さのせいだったとは私には思えない。
それがとてもきつかった。

勿論どんなに辛くて苦しい状況であっても我が子を殺す(捨てたとマイルドに表現していますが、ほぼ生存不可能な状態で遺棄しているので殺意はあったでしょ)なんて絶対に許されることではないです。
罪は罪。
でも私は罪を問うことと、罪を犯してしまう程追い詰められた人の背景を理解するのは両立できると思うし、王妃様を批判する意見は多いけど彼女の不幸に言及する意見はあまり見ないなぁと思ったので、そちらをメインで語ってみました。
こういう人間が1人くらいいてもいいやろ。

そしてもう1点とても重要なのが王妃様を追い詰めた「周囲」について。
アーサーが魔法使いだということはごく一部の限られた人しか知らされていなかったのですよね?
そこであらぬ噂を立てられたとヘイガルさんが証言している。
誰が王妃様を追い詰めたのか具体的に名前を挙げられるのではないの?そこ追及しないの????
ここはね、ヘイガルさんにもっと義侠心があればなぁとは思いました。
でも彼は多分政治的な目端は効かない穏やかな老文学博士なので(そこが美点でもあると思いますし)……やはりアーサーの補佐役として汚れ仕事も厭わない有能な高位文官の登場が待たれます。
誰か!心ある忠義に篤い家臣!!!!(中央の国の政治改革ストーリーを夢見る民)
ところでこの“権力者が周囲の言葉によって非人道的行動に走るよう追い込まれる”流れってとても既視感があるのですが…そう、アレク様がファウスト先生を処刑しようとした経緯にとても似ている。
まさか…?この2つの事件に関連が???考えすぎ???
関連があるというよりも単に「魔法を使わなくても人間の心は言葉で簡単に操ることができる」というメッセージなんでしょうか?(辛い)

③アーサー失踪後の宮廷(主に国王陛下)の対応
国王陛下、存在感が薄い。
これはね、Twitterでも言ったんですけどおそらく物語の構造としてアーサーとオズの関係にフォーカスさせるために、母親の描写はある程度あっても父親との関係性は控えめに描いているのかなぁと思っています。
そこは南兄弟におけるフィガロ先生、ミスラ、フローレス氏も同じようなバランスなのかと。
アーサー失踪の真相を知った国王陛下がアーサーの捜索規模を縮小し秘密裏に行うように変更したのは、王妃様とアーサーの名誉の為ですよね。もしもアーサーが無事生還できた時に誰も傷つかないように。
私はここは王家の信用問題の為もあるだろうけど、どちらかというと家族愛故と思っています。
グランヴェル国王については描写が少ないので私もこうだったらいいなという願望こそあれ、推測できるだけの判断材料が足りないんですけど。
でも愛が無ければその後世継ぎの子供を産むこともなく心を病んだ王妃なんてとっくに離縁・王室追放されてもおかしくはないし、行方不明の王子もさっさと死んだことにして次の妃を迎えてたと思うんですよね。
それに病床に伏した国王陛下がアーサーに会いたいと言って決死隊が編成されたということは「我こそは」という猛者が陛下の為に集ったわけでしょ?
家臣に慕われるいい国王なのではないかと私は思う…。
グランヴェル国王の心の内を知るエピソード、今後出てくるといいんだけどな。


④橋のスポエピについて
グランヴェル城の橋のスポエピ、大好きなんですよ!!!
通常王族は歩いて渡ることはないグランヴェル城と市街を繋ぐ橋を手を繫いで一緒に歩いてくれたのは、そんな高貴な身分の方々の行動様式なんか気にせず我が子の我儘を叶えてあげたんですよね、国王夫妻。
権威や上流階級の作法だけに拘らない国王夫妻の優しさを感じる暖かいエピソードだし、たったそれだけのことが幼くして両親と離れてしまったアーサーの大切な思い出になっているという切なさも含んでいる。
ここ掘り下げられたら確実に泣いちゃうな~って思ってたので、まあ泣いてしまったんですけど。
アーサーは自分が幼かったからこの思い出が少し曖昧だと言っていたけれど、ヘイガルさんのお話によって確固としたものになりましたね。
そして忘れていた星の数え歌も王妃様に教わったのだというエピソードも追加されました。
「アーサー、良かった」私は素直にそう思いました。

それはそれとしてアーサー、弱冠17歳で王子として公務をこなし(実際は13歳から公務に携わってる)、けんまほとして各地の事件解決に赴き、普通の大人以上の働きをしているんですよね。
その上で自分を殺そうとした精神疾患の母親との関係修復を望み、病気の父親の心配もしている。
誰がアーサーのケアをするの???
これ、犬バラの直後にも同じこと言ってたんですが、大人(オズも含めて)が其々辛い過去を背負って苦しんでいるのはわかるんですよ。
みんな適切なサポートを受けて癒されて欲しいと思うけど、そこで彼らのケアをしようとしているのが17歳の少年なのはちょっといかがなものかとは思うんですよね。
その後のサンリオコラボや1.5アニバログストではオズからアーサーへの心のこもった言葉が贈られてはいるけれど…カインやリケ、他のけんまほの仲間もアーサーを気にして助けてくれてるけど…私はオズはもっとやらなければいけないことはあると思いますよ。
今回は賢者も苦言を呈していたけど超がんばって。
ちょっと話は逸れるけど、子供が大人のメンタルケアをしているという点ではフィガロ先生とフローレス兄弟の関係もそうなんですよね。
孤独に苦しむ大人が真っ直ぐに自分を慕う子供の純粋さに触れて救われること自体は素敵なんだけど、子供が傷ついた大人を気遣って自ら寄り添ってあげる状態を美化し過ぎるのはよくないじゃないですか、やっぱり。
これはそういうシチュエーションを描くなという事ではないです、念のため)
ここはほんとに表現の匙加減が難しい部分だと思うし、まほやくは結構ギリギリを攻めてるなとも思ってる。


そんな中で俺たちのスノウ様がやってくれましたよ!!!!
「星から落とされた流星の子供」
双子先生とオズの関係を王妃様とアーサーに擬えて未知の力を持った子供への恐怖とそれでも愛はあるというお話。
お城と市街を繋ぐ橋はアーサーと両親の絆、譜面に見立てた星空が煌めく思い出のメタファー、そこから零れ落ちた流星がアーサー、ただ1人受け止めることができたのは最強の魔法使いオズ、綺麗に繋がりました。
泣いちゃったな。
スノウ様、悪戯好きで気まぐれで飽きっぽくて残酷な一面もあるけれど、ここ一番で孫弟子への気配りと優しさを見せてくれました。
それでこそ師匠の師匠。ありがとう、ありがとう。
そしてこのスノウ様の言葉がアーサーからヘイガルさんへの誰も傷つけない優しい嘘に繋がるのですよね。
このアーサーの優しい嘘って一見するとアーサーが自分だけ感情を押しころしてヘイガルさんを気遣ったように見えなくもないんですけど、全然そうじゃないんで!(と私は強く思ってる)
私は他者への優しさとか労りってその場で自分に還ってくることもあるけど、連鎖していくこともあると思うんですよね。
スノウ様からアーサーへの思いやりの言葉がアーサーからヘイガルさんへの言葉に巡り、ヘイガルさんからの教えが幼いアーサーの情緒や語彙を育み、そのアーサーが誰に対しても無関心だったオズの心を動かしたこと、皆繋がっている。
王妃様に捨てられたアーサーにもそれまでに受けた愛や優しさはあったし、誰にも心を開かなかったオズにも双子先生からの愛は与えられていた。
運命的に出会った2人に強い絆が生まれて、そこで育った愛がまた他の誰かに連鎖していく……んだと思うんですよね。
そういう夢を見たっていいじゃない。

ところで両親や中央の国を恨んだり憎んだりしないアーサーを「良い子すぎていて人間味がない」みたいに言う風潮、いまだにありますよね。
まあどんな感想を持っても自由ですけど、世の中みんながみんなエレン・イェーガーじゃないんですよ?とは思う。(エレンに対する酷い風評被害
確かにアーサーの境遇は両親や中央の国を恨んだりしてもおかしくはないと思う。
でも「普通は憎むはず、恨むはず、だからそうじゃないアーサーが信用できない・好感が持てない」ってそれまんまヴィンセント様の思考じゃん?
いや、ヴィンセント様に共感してその感性を推す人がいてもいいんですけど。
ただ、今まで1年半分のまほやくストーリー読んでれば全体通して「恨み・妬み」成分がとても少ないことがわかるのに何でそういう思考になるのかなぁって私は寂しくは思うよ。
このパートだけ凄い長くなっちゃったな。(えへへ)


⑤グランヴェル王宮における魔法(魔法使い)への理解
ヘイガル先生、「アーサーがオズに拾われる前の4年間で王族としての基本的な言葉遣いや礼儀作法を身につけていた」という設定を綺麗に補完してくれましたね。
イベント告知PVを見た時に「アーサーの元家庭教師」という設定でそこは予想できたし、期待を裏切らない素敵な先生でした。
そしてたった一人の世継ぎの王子の家庭教師として文学博士が選ばれた(他の学問、武芸などの家庭教師も複数いるかもしれませんが)こと、そもそも文学者・文学博士という職業が存在していることが確認できて、中央の国の文化・教養観も垣間見えました。
スノウ様も言ってたけど言葉を大切にするヘイガルさんの教えと、アーサー自身の好奇心旺盛で学習意欲が高いという資質が作用しあって、4歳にしてオズの不興を買うことない人格に育っていたんですよね。
結果論だけどヘイガルさんがアーサーの命の恩人とも言える。
ヘイガルさん、魔法使いへの差別や偏見も感じないしこのままレギュラー化して私が夢見る中央の国の政治改革に協力して欲しかった。
そう、読み飛ばしがちなんだけどヘイガル先生はアーサーに国の歴史や伝承も教えてくれてたんですよ。こういう知識人、アーサーの傍に絶対必要じゃない?
まあ、アーサーの歴史書問題はメインストでじっくり取り上げる気もするので、それまでは寧ろこういうアーサーの過ちに気づいてくれそうな人は引き離される筋書きなのかもね(辛い)。

ところでヘイガルさんって、中央の国でも上位の知識階級に属してると思うんですよね。
そんな上級インテリでも魔法や魔法使いに関しては迷信染みた解釈の知識しか持っていなかった。
勿論学問の専門分野の違いによる理解不足もあると思う。
でもチェーリオ司祭なんかとは違って元々魔法使いには敬愛の念があり、更に自分の教え子が魔法使いだという事を知っていたにも関わらず、魔法関連の知識は一般人と変わらないレベルだったんですよね。
アーサー失踪は自分が持ち込んだオズの魂(偽物)の所為だと13年間も自責の念で苦しんできたと思うと、ヘイガルさん自体はインテリなだけに無知の不幸の重さを感じました。
アーサーの“偶像を駆使した魔法使いのイメージアップ戦略”も一般国民向けにはいいと思うんですけどね、それとは別に国の中枢部にはもっと魔法や魔法使いの正しい知識を得てもらうことも必要なのでは。
ただこれは諸刃の剣でもあって、魔法使いにとっては人間により深く理解してもらうことは自分たちの弱みも広く知られることになるかもしれず、それを良しとしない層も(特に古い魔法使いの中には)いるとは思う。
前途多難だな、アーサー。

 

※     ※     ※ 


こうやって書き出してみると結構細かな新事実が描かれていますよね?
ここ最近のイベストはつしみ先生以外のライターさんのシナリオでも、周年ストを受けた内容だったり今回のようにスポエピを補完してきたり、あからさまな2部までの繋ぎのゆるふわストーリーにはならない工夫がされている気がします。
犬バラがあれだけのヘヴィさで、それでも読者に支持されたからイベストもその方向性でも受け入れられる!って公式で判断されたんですかね?
これは全て私の妄想なんですけど、今回のこれだけのエピソード補完はさすがにちゃんと両先生の元からの設定や意向も反映しているんじゃないかと思うわけ。二次創作じゃないんだから。
確かに本筋は大きな進展もなかったし、どうしてもつしみ先生の書かれる文章と印象は違うけど、私は全然がっかりはしませんでした。
でもね、わかる。特に強絆担は犬バラという特大の傷を負ってるから、アーサーの内面を掘り下げるなら同等の破壊力で挑んで欲しいって思っちゃうよね。
私の中にもそういう気持ちはあるし。
で、思ったんですが、この中央ラプソディはあくまでも中央の国の人間、しかも過去の事件の当事者を傍から見ていた人目線のお話じゃないですか。
多分メインストーリーはもっとがっつり当事者目線のお話が来ると思うのですよ。
だからこれはそれに向けた予行演習ってことで。どうでしょう?(誰に向けて言ってるんだ?)

以上、とても時間がかかったけど、なんとか自分の内面にある程度向き合えました。
本当は他にもパーティーの主旨ガン無視のゴス服可愛かったわね、とか例え自分が好感を持っている相手でも不自然な点があればアーサーの騎士として対処するカインカッコよすぎか!とかオズの事を導く気満々のリケ可愛いな、とか色々あるんですけど、まあそういうのはTwitterでも気軽に言えるから、もうここではいいかな。
そうそう、最後になっちゃったけど今回もドロンボーみたいな悪役を一手に引き受けてくれた北3、ありがとな!