感想と妄想

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「繫いだ絆は魔法のように」感想 1~6話

まほやくも遂に2周年。

以前つしみ先生がインタビューで「2周年はコメディにしたい」的な事をおっしゃっていたので、まさかここまでのボリュームと重量感(婉曲した表現)の2周年イベストが来るとは思っていませんでした。
寧ろ早く2部を開始して貰えるなら2周年ストはお祝い感のある軽めのストーリーでいいのよ、と思っていたので不用意なダメージが…皆さん心の準備していました?全然受け身とれてなかったの私だけ?
これはもう実質2部のプロローグですよね。

 

わかりました。

 

そっちがその気ならこっちもそういう心構えで向き合いますよ。

 

でもそうやって身構えさせておいて、クリスマスとかバレンタインにはふんわりハートフルストーリーだったりするんでしょ、どうせ。
もう、まほやくに振り回されっぱなしですよ。

そんなこんなで色々思うことはありますが、ユーザーの心に深い爪痕を残した2周年イベストの感想をまとめていこうと思います。
1周年の時は勢いがあり過ぎて感想文なのに膨大な量になってしまい、書き始めるまでに1.5か月、書ききるのに1か月以上かかってしまったのが個人的には反省点でもあるので、できればもう少しコンパクトにしたい、コンパクトになるといいな、みたいな、そんな感じです。
しかし下書きしているこの時点で既に2021年12月末…結局去年と同じペースやないかい!!!
どうなるんでしょう…

 

     ※     ※     ※ 

 

第1話


ムルとシャイロックがヴィネイター流星群について語る哲学的な会話で始まる第1話。
なんだかここで既にあ~、つしみ節だなって思いました。
1周年の時もそうでしたが第1話は物語の始まりであり主題の提示でもあって、読み返すともうこのパートで全てを語っているんですよね。
流星群に擬えた魔法使いの師弟の系譜、長い年月の中で変わっていくものと変わらないもの。
あらかじめ終わるとわかっているものを救済しようと願う矛盾。
この話は最後にまとめて語るとして、1話で気になった点を書き出してみました。

◆ヴィネイター流星群とまほやく世界

シャイロックが「今年も」と言っているのと、17歳のアーサーが何度も観ているということから、ヴィネイター流星群は1年か数年おきに巡ってくるみたいですね。
毎年訪れる大いなる厄災の子分とも言われていたらしいので、毎年なのかもしれない。
まほやく世界、平面説と球体説があると思うんですけど、流星群という存在によって俄然球体説と我々の世界の宇宙と同様の宇宙観が濃厚になってきました。
と、ここまで言っておいてアレですが、よく考えたらフィガロ先生がアーサーに天球儀を贈っているので、普通にあの世界は球体だし惑星や宇宙の概念があるんですよね。オーロラも極光なんだろうな。凄い今更だ!
でも地動説が有効かはまだわからないので…世界の謎はまだまだ明かされていません。知りたい。

◆けんまほたちの何気ない日常

賢者の目を通したネロ、ファウストシャイロックの食堂での何気ないやり取りがめっちゃ良かったですよね。
これは1周年での市場の東まほや、ファンブック書き下ろしでの若まほたちの会話劇と同様で、どうって事のない日常の会話を見せながら彼らの関係性、其々の個性を描いているんですよね。
こういうのつしみ先生本当にお上手だし、読んでいてにこにこしちゃう。好き。
私も軽くトーストしたバゲットをオリーブオイルと塩で食べるのが凄い好きだから「共感~」って思いました。

 

◆アーサーの不安について

これまでも過去イベストの随所で垣間見えた、2人の関係への不安がここにきてアーサーの言葉で言語化されました。
これは自分の担当分野として言及せずにはいられない案件だ!長くなりそう。長くなってもいい?さっき「コンパクトにしたい」って言ったばっかりなのに?
でも書きます。だってこれ、このイベストのテーマに関わるポイントの1つでしょ?
「オズ様の弟子だと思っていますが、そう名乗るのは私だけです。」
このセリフは以前つしみ先生が強絆について「アーサーはオズの愛情に慢心しきれない」と語られていたのを、よりわかりやすく当事者の言葉で表現されたのだなと思いました。
この「慢心しきれない」がその筋の人達の中で結構認識が分かれていて、興味深いんですよね。
私は言葉のまま愛情に慢心していない、慢心できる確信が持てていないと解釈しています。
いや、だって慢心できる要素まったく無いじゃないですか?
そりゃ我々読者は神視点でオズのアーサーへの巨大感情をこれまで散々見せつけられてますから知ってますけどね、それアーサーには全然直接伝えてないから(オズを横目で見ながら)。
なので、それをアーサーの自己評価や自己肯定感の低さ、みたいには私は捉えていないです。
確かにアーサーって自信満々の俺様タイプではないけど、「愛はどこにでもある」「愛は築くものだ」っていう超ポジティブな世界への肯定感満点の発言をしているし、オズの心情を理解できていないのはアーサーの責任ではないというか…仕方ないよね…みたいな、そんな感じ。
アーサー自身は常にオズへの憧れや慕情全開で隠そうともしてないし、オズが誰かに何かを与えているのを見れば「いいな」って普通に言葉にできてるし。
犬バラのあの状況でも自分は帰ってきてはいけなかったのか?とオズに面と向かって訊けている。
全然自分の気持ちは表現できてると思うんですよ。
勿論、オズに対して(迷惑にならないような)多少の遠慮や節度を持った自制をしている部分はあると思うんですよ。
もっとグイグイ行って欲しいという人の気持ちもわからなくはないので、ここは読者がそれぞれの解釈ができる余地のある部分なのかな?とは思います。

ところでイベストの予告でヴィネイタ―流星群の事は知らされていたのですが、流星と言えば思い出すのは中央ラプソディですよね。
スノウ様がアーサーに「そなたは流星の子、受け止めたのはオズ」という超熱いお話をしてくれたのがまだ記憶に新しいです。
「魔法使いの師弟の系譜の流星雨」という概念があったからこその例え話だったのだな、と思うとスノウ様、心憎い!!!って思いました。


まほやくにおける師弟関係について、今まで何度も思いを馳せていたのが2周年にして遂にそれをメインテーマに据えたストーリーが来てしまった感。予告の段階でそんな予感はしてた、してたよ。
でもいざ読んでみたらあまりにも踏み込んでいる。
心臓が痛いです。

あの途中に挟まれたネロ+ファウストシャイロックのふんわり日常系エピソードはなんだったの?
ジェットコースターの待機列ですね…。

 

 

第2話~第6話


こいつ、いきなり5話分まとめてきた!って思いましたよね?
いやいや、「コンパクトにまとめたい」と思って…
といいますか、2話~6話の5話って殆どがけんまほ会議、別名「ミスラ王国」に割かれているんですよ。
なので、1話毎に感想書くよりここを1つのパートとしてとらえた方がいいかな?と思って。新たな試み。
難しかったらやめます(弱気)。
丸々5話、長くない?初見の時は大笑いしながら読んでたのであっという間だったのですが、改めてメモを取りながら読んだらとんでもない大ボリュームでした。
このパート凄いんですよね。
登場人物賢者も入れて22人全員登場させて、それぞれの個性を出しながらその性格やアイデンティティまで見せるような圧巻の構成。なのに基本ギャグパートという。
つしみ先生の力量が存分に発揮されてた気がします。
めっちゃ面白かった。

 

◆賢者の人選
普通に考えて、1番議長に向いてるのアーサーだと思うんですよ。
公務でも会議を進行してるし、ログスト最終日のトークバラエティの司会も手慣れてた。
なのにそこでいきなりオズに行ってしまうあたり賢者、既に人選を見誤っているだろ!と思ったんですけど、でもこれはあれだ、宝剣の時に見た公務で心労が重なってるアーサーへの「魔法舎でまで負担をかけたくない」という賢者なりの配慮ですかね。
まあ、素直に会議に協力してくれなそうな北3対策とかもあったのかもしれないけど、だとしたらフィガロ先生とかもっと場を仕切るの上手そうな人はいるのに、追い打ちをかけるようにラスティカを指名とか…「優雅、かつ軽やかに」じゃないんですよ…


◆ミスラとミスラ王国
2話から6話までほぼほぼミスラの独壇場でした。
ミスラのオズへの対抗心って、オズへ戦いを挑んで返り討ちとか双子先生にダシにされて口車に乗せられたりとか、コメディタッチで描かれることも多いんですけど、ここも最初はそういうノリで描かれていましたよね。
これがこのイベストのもう一つの軸であるオズとミスラの確執に繋がっていくとは、この時点では全く予想はしていませんでしたが。
ミスラ大活躍だな~とか思って笑ってた。
しかもイベストを最後まで読んでから改めてこのミスラ王国を読み返すと、ここでの様々な会話がめちゃめちゃ後半の伏線になってたんですよね。
読み返すごとに新たな味わいが生まれるまほやく、恐るべし。

王国という例えを出したのはシャイロックですが、それって精神の宮殿ということじゃないですか?
あなたの心の中で誰がどういう位置付けなのか?そういうかなり相手の心に踏み込んだテーゼなんですよね。
それにきっちり(適当な部分も含めて)答えていて、ミスラ自分より弱い者に興味関心無さそうに見えて、意外とちゃんと見てるんだなって思ったんですよ。

特に秀逸だなと思ったのがシャイロックとルチルへの評価と死体用意係の配役ですかね。
ムルはシャイロックに夢見てない?って言ってたけど、ミスラにとってはシャイロックって「最悪な時に最悪なことをしない」っていう認識なわけで、それはシャイロックが見せる他者への洞察力や思慮深さを理解しているってことなんですね。
で、それを「優しい」みたいな月並みな言葉じゃなくて「最悪な時に最悪なことをしない人」と言い切った表現力よ!
そしてそれに対してルチルへの「最悪な時に最善のことをしようとして最悪なことをするタイプ」という評価ね。
私も初見の時は「ミスラ、ちょっと酷いんじゃ…」って思ったんですけど、これはこの後のパートを読んで「そうか…」と納得した部分でもありました。
この話も該当パートでもうちょっと詳しくしたいと思います。

渡し守役のミスラの為に毎日新しい死体を用意する役目に指名するのがフィガロ先生、というとこでめっちゃ笑いました。
間髪入れず賛同する北3メンバーも息が合ってた。こういう時は仲良いよね!
でもそこまで言っても肝心の北バレは回避してあげててみんな優しい。
単にフィガロ先生を動揺させて楽しんでるだけかもしれないけど。
まあそれよりも注目したいのはフィガロ先生の次に指名したのがシノってことなんですよね。
ミスラが言うにシノの魔道具が殺意高めの大鎌だかららしいのですが、でもイベストを最後まで読んだ私は、ここは“目的のために他者の命を奪うことに躊躇いがない”とミスラが思える順で指名したのでは?と思っています。
勿論ここに北まほも該当するとは思うのですが、オーエンとブラッドリーはこの時点では既にフローレス兄弟を守る騎士役ですから、それ以外でという選択肢なんでしょう。
それに対して「それはちょっと…シノにさせたくないかな」って言うヒース…うん、そうだよね!(ルチルとユニゾンで)
でもそれって、そういう場面がいつか巡ってくるってことじゃないのかなぁ…そうならないといいけどなぁ…とても心配。
だってミスラ、意外とみんなの本質を見てるから。

 

◆アーサーと「公」の概念について

2話、アーサーとミスラの「国王(王家)と民の関係」についての発言に唸りました。
まあ、アーサーは今現在中央の国の政治に携わっているのでこのくらいの概念、さらっと言語化できて当然といえば当然なのですが、ここと4話でルチルに再就職のあっせんをするミスラに対して「良い政権」って言い切る辺りとか、彼の「公」に対する概念が描かれてとても良かったです。
特に「良い政権」のとこ、一緒に褒めてるのはヒースなんですよね。
ここは会話劇の中のほんの一言なのですが、彼ら「統治する側」の視点が感じられる良エピソードでした。
あとね、会議で何も決まらなくて落ち込む賢者に対するフォローも良かったよ。
「私たちの大切なことを決める会議」「だからこそ私たちのことを知らないままでは良い答えが見つからない」、これって「きみのことを知ろうと思った。知りたいと思った。」ってことでしょ。
アーサーの言葉通り、21人のけんまほの個性が際立った会議パートでした。
それはそれとして、2部以降の中央の国の会議でヴィンセント様の椅子を宙に浮かべてくるくる回すアーサーが見れるって期待してていいんですよね???

 

◆ラスティカのゲームとオーエン、そしてブラッドリーの語る北の矜持

6話冒頭でのラスティカのスピーチに痺れました。
生きていたい、できるだけ楽しく、という話に対してその言葉遣い、言葉のチョイス、全て好きすぎるんですよね。
さすが芸術と娯楽の国の誇りを知る男!
いきなり私情丸出しですみません。でも好きなものは好きだから仕方ないじゃない。
クロエも私も当初は少し心配していたけど、ラスティカの議長っぷり、意外と良かったですよね。
面倒で結論を出すのに時間のかかりそうな話し合いを楽しく進めるための創意工夫、私はとても評価します。

だけどオーエンには伝わらなかった。
ここのオーエン挙動については、サンリオコラボの時の「やったな!オーエン!」「やめろってば!」と同じ行動原理なのかなぁと個人的には思っています。
自分が心を許していないどころか、見下してすらいる複数の相手から自分に対して向けられる好意や友好的な態度への、居心地の悪さと拒絶。
サンリオの時はオーエンのちょっと笑える可愛いエピソードとして描かれていたけど、今回はとてもシリアスでした。
どちらもつしみ先生のテキストなのでこれは意図的な対比なんじゃないですかね。
困惑するラスティカに北の矜持をレクチャーしてくれるブラッドリーですが、これは私も大変参考になりました。
実をいうと私もかなりの部分ラスティカ派(別に貴族だとかお金持ちということではなく、できるだけ楽しく生きていたいという点で、です。そんなの言わなくてもわかるか。)なので、ブラッドリーの言う「俺たちは奪ったもんか拾ったもんがいい」って本当の意味では理解できていないんです。
欲しいものは自分の努力で掴みたい、とかならわかるんですけど。
ブラッドリー自身、人一倍苦労して強くなった魔法使いですし彼の言いたいことってそういう部分も含んでいるとは思うのですが。
持たざる者に生まれた身として誰にも同情や哀れみの目で見られたくない、弱者として施されたくないという強い誇りと意思には共感できるのだけど、その発露として「奪う」になってしまうのは、それだけ北の国が過酷で厳しい世界なのだとしてもどうにも賛同できないというか…
実際そういうのに嫌気がさしたのもあるでしょ?ね?ネロ。

なので、私個人としては北の矜持って共感できる部分もあるけど、納得できない部分もある、まだ理解途中の概念という棚に一時置きされている感じです。
この辺りについては北まほに造詣の深いフォロイーさん方のツイートをいつも参考にして考えているんですよね。

で、このやり取りの後の「ある人の常識はある人の非常識!ある人の愚かさはある人の高潔さ!」というムルのセリフはまさにその通りで、そしてそれは魔法使いの約束という物語の重要な一面でもあると思うのでした。

 

◆ここまででオズのセリフあった???

そう思っていた矢先の第6話、ついにオズが重い口を開きました。
セリフがあって良かった(安心という意味で)。
今回の魚の骨取り係のように、オズが何の意思表示も発言もできない間に何かが始まって終わってしまう現象って、大体コミカルに描かれているし私も笑ってたりはするけど、実はそれがオズにとっては決して楽しい事ばかりではないんですよね。
そこは忘れないようにしないとな、って思う。
でもその表現が読者にとって不快になり過ぎないような配慮はされているな、とまほやくに関しては思うんですよ。
例えばそういう場でアーサーがオズの本意を言語化してくれたり、そもそもオズがその場にいる者の中で最も力のある存在だということでとてもマイルドになってる。(弱い者いじめみたいにはなっていないという点で)

まあ力があるからって蔑ろにされていいというわけではないんだけど、でもフォローする人や気付いてくれる人がいるということが作中で描かれるかどうか、ってかなり重要じゃないですか。
そこに作者の意図や意思が現れると思うから。

 

ここまででピックアップしたこと以外にも、ミスラ王国でも人々が堕落しないように正しい道に導く神の使途の仕事をしたいリケとか、中央の国は文化的な国柄とか自慢しちゃうカインとか、結婚と約束の概念とか、シャイロックのせいで滅びた島とか、三匹の子犬とケルベロス父さんとか、気になるポイント目白押しでした。
今後の展開にも大きく絡んでくる要素もあるので、それはまたそこで語れたらいいなと思います。
そして5話に渡る会議の果てに遂に議題が決まりましたね!

「賢者の力を確かめる」
そこ、大事ですよね、ぜひ掘り下げて欲しい。

 

     ※     ※     ※ 

 

「コンパクトにまとめたい」という意思の下、がんばってコンパクトにまとめてみました。
内容が偏っているのはいつものことなので見逃してください。
1周年ストフルボイスの前に書ききりたかったけど到底無理そうなので、マイペースで書けたらいいなと思います。
今日はここまで。