感想と妄想

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「きみに花を、空に魔法を」感想(15~17話)

第15話

ミチルにヒースとリケを託して1人ミノタウロスと戦うシノ。
ここの戦闘描写を読む限り、シノは勝機を諦めていた訳ではないと思うし、皆が生き延びる現実的な術を模索していたと思います。
それよりミノタウロスの「荒々しい動作に反して静かな黒い目をしている」点について「昔のオレみたい」とシノが評していたのが気になりました。
彼の過酷な幼少期を匂わせる台詞はこれまでも何度かあったんですが、ここはなんだか不思議な比喩だなと思って。
静かな黒い目。
自我もなくただ生存欲求のみで汚れ仕事も厭わなかった過去、そういう事?
いや、いくらなんでもミノタウロスに過去の自分を重ねたりはしないだろ?とも思うのですが。
そんなに気にしなくてもいいのかなぁ?
シノって口ではあんなに他者を羨ましいとか、自分には何もない的なことを言ってるのに全く卑屈さを感じないところがとても好きなんですよね。
多分彼は事実としてそうだと語っているだけで、それ以上の自己憐憫や自分より恵まれている人への嫉妬心のようなものを感じさせないからなんだろうなと思う。
これはまほやくの登場人物全般に言えるんですけど、怒りや悲しみといった感情表現はあっても「怨み」「妬み」「卑下」みたいな成分が少ない、多少あったとしてもそんなに粘着質じゃない感じが快適です。
物語の善性を感じるというか、個人的にまほやくの好きポイントなんですよね。

 
と、ひとしきり語ったところで結構粘着質の怨み成分を多く含んだ人が出てきました。
オヴィシウスっていうんですけど。

彼、ちょっと怨み成分がトゥーマッチですよね。
手下の魔女達ほどの好感を持てる要素が薄いし、
黒幕がいそうだとしても小物感は否めない。
オリジナルムルの方がよっぽどラスボス感有るんだよな、実際の話。

ところでターリアも魔女だけど、自らいばらを編み続ける事でいばらの城に取り込まれて眠りに就いているので、彼女自身が「眠れる森の美女」ですよね。(名前も「太陽と月とターリア」から来てるんだろうし)
彼女を目覚めさせるようとするのが黒装束の魔法使いで、その手段としてグランヴェル城をいばらに取り込み人間を眠らせるって、まさに物語の反転世界的演出ですね。
いばらを編んで願いを叶えようとするのは若干「白鳥の王子」っぽいけど。

 

ヒースとシノの約束ってみんなが知ってる訳じゃなかったんですね。
これまでの物語で誰が知っているか詳しく言及されてなかった(と思う)ので、ミチルとリケが知らされる場面で気が付きました。
でもこれ、凄く重要な約束だからけんまほ全員共有した方が良くない?(知ってれば協力できることもあると思うし)
ヒースにシノから頼まれた内容を打ち明けるミチルがね、自分を1人前に扱ってくれたから嬉しかったっていうのが切ない。
シノの意図を知って怒り心頭のヒース。

ここはね、シノの気持ちもヒースの気持ちも分かるから読者は板挟みで辛いところなんですよね。
お互いにお互いが大切なのに微妙に目線が違ってすれ違うこの感じ、まほやくの真骨頂なのですが。

2人の関係を丁寧に描いた前半のエピソードがここに来てめっちゃ効いてます(私に)。



第16話

 箒星の雫」を試したいと言うリケを見て思ったんですけど、どれほどの効果があるのか全く分からない魔道具をそんな緊急時にいきなり使おうと思うなんて、結構怖いもの知らずですよね。
そこが子供だと言われればそうなんですけど、これはリケの「中央の国らしい」前向きな性格もあると思うのですが、挫折経験の少なさもあるのではないかと思うんですよ。
人々を導く神の使途として育ち、今は年長の魔法使い達と肩を並べて「賢者の魔法使い」としての使命に邁進して、自己肯定感に満たされている感じ?
ミチルが魔法に関して自信を失いつつも健気に自分のできることを模索しているのと対照的です。
今後の成長のステップとして大きな挫折はあるんだろうな。(まあこれは殆んどの若い魔法使いに言える事だとは思うけど。)

 

ところでオヴィシウス、ターリアの事を「妻」と呼ぶ割には「彼女の事を一番考えていた」とか「俺しか彼女を理解できなかった」と自分の事ばかりを主張してムルを責め立てているのですが、これはなんだかあれっぽいですね「俺の嫁」的なあれ。
だってこれフィクションにめっちゃありがちなストーカー犯罪者のセリフみたいじゃない???
ムルの導きが正しかったかどうかは分らないけど、少なくともムルはターリアの事を「嫌われ者」とは言わずに「面白い子」「不幸ではない」と言っているので、ここはオヴィシウスの分が悪いですね。
オヴィシウス、そういうとこだよ。


それにしても月に近付こうとするとやっぱり身を滅ぼすの?
というか、ムルとターリアの事例しかないけど、彼らが月に近付きすぎて受けた酬いって自分の魔法の呪い返しみたいな感じじゃないです?

 

一方その頃グランヴェル城内では…。
フィガロせんせ~、「この城が壊れたら悲しむ」と言われてた子達(いえ、主にアーサーですけど)、めっちゃお城壊してま~す!!!

まあ、アーサーににとっては自分ちだから、どうしようと自由って言えば自由ですが。
「アレク様」という単語に分かり易く反応するレノックスと、それを諫めるファウスト先生、抽象的なオズの説明を正しく理解して翻訳するアーサー、困惑する元主従の2人、相変わらず城内はしんどみが薄くて可愛いです。
ファウスト先生の「えっ???」っていうボイスに笑っちゃいました。
ここで注目すべきは、私的にはやっぱりファウスト先生の公正さだな。
あんなに嫌っている中央の国の、その核心とも言うべきグランヴェル城(とその中の人間)に対して「業深い城ではない」「彼らに罪はない」と言い切れるんだから。
この人本当に物と事の切り分けができる人なんだな、と思いました。
こんな大人になりたい。

 

オーレオリンに対してアーサーがオズの気配を感じるのは、彼らが身内のようなものだからとも思えるのですが、ファウスト先生も感じていたという事は、ある程度魔力が強いと自分の知っている魔法使いの気配が分かるという認識でいいんでしょうかね?
そう考えると病の沼でビリジアンにオズの気配を察知したのがフィガロ先生だけだったというのも、彼らの魔力を推し測る際の目安になりそう。
ラスティカが市場でオヴィシウスを魔法使いと見抜いたのも似たような感じなんですかね?
なんとなくなんですが、現状年長の魔法使いと若い魔法使いの力の差が結構大きい気がするんですよ。
ここまでのストーリーで彼らの心の成長は少しずつ描かれていると思うんですけど、魔法の力についてはまだそこまで描かれていない気がして。
若い子達が魔法の力ももっと成長できる描写がこれからあるといいな、と個人的には思っています。
いや、でも魔法は心で使うものだから、心が大きく成長したら大きな魔法が使えるようになるのかな?


オーレオリン本人さえ気づいていない彼女の正体と、これからの運命を無情に告げるオズには、ちょっぴり古い魔法使いらしい冷徹な威厳を感じました。
そういうオズも私はとても好きですよ。

 

第17話

冒頭のカインとオーエンの掛け合い、「ふん、良かったね。」「ああ!おまえの助言のおかげだ!」「はは・・・。馬鹿。」ってとてもいい感じじゃありませんでした???
思わずセリフを書き出してしまう程に。

いつの間にそんなに仲良くなっちゃったの!?
正直ビックリだよ。
なのに…。
確実にいばらの蔦でオーエンの人格が変わったので、やっぱりこれが傷人格へのトリガーなのかな。
そういえばメインストーリー読み返したんですけど、うまい具合にオーエンの人格が変わる瞬間は描かれていませんでした。
いばらがトリガーと思わせて何かギミックがあるかもしれないけど、まあこれはいつか明かされるでしょう。
先に進みます。

 

生死を賭けた戦いの最中、敵の要求に応えてに優雅にお茶を飲んで待ってくれるスカーレット、普通に良い人だ。
彼女達はオヴィシウスによって作られた人形だけど、マナ石の元の人格をそのまま引き継いでいるって事でいいんでしょうか?
それってマナ石には元の魔法使い(或いは魔法生物)の人格の情報が宿っているという事???
私は(そう思ってる人は多いと思う)オズを始めとする北の魔法使いが殺した魔法使いの石を食べるというのは、マイルドに表現したカニバリズムだなと思っていたんですけど、もし石に「魂」や「人格」の情報が残されているとしたら全然マイルドじゃないですね。
マイルドじゃないけど、強い魔法使いのマナ石を食べて強くなるという理屈は通る気もする。
ちょっとこの話長くなりそうだから別の機会にちゃんと考えたい。
あと、これ死者そのものが生き返った訳じゃないけど、何気に反魂の禁呪っぽさもありますよね。
オズの血を媒介にしたという事は、オズも同じ魔法、その気になったら使えるのかなぁ。
凄く話が逸れました。
つまり何が言いたいかというと、生前の人格がそのまま人形に宿るのなら悲願達成の為のプロジェクトにこんな「ザ・西!」みたいな人選でいいの?ってことですよ。
オヴィシウスどういう基準で彼女らを選んだんだろ。
魔力の強さなのかな?
もう絶対明かされることはないだろうけど、気になります。

 

そんな妄想を巡らせている間に傷オーエンとカインは大変なことに!
ここはね、もう前にも書いたんですけど私はどちらも「仕方ない」派ですよ。
「栄誉も勲章もいらない。俺の胸に誇りと灯火を与えてくれる」とまで思う人達を助けたいカインは全然悪くないし、オーエンだって普通の状態ならそのまま協力してたと思うし。
傷人格になったのもオーエンの意思ではないのでそこも責められないでしょ。
ただね、ちょっぴり思うのはもしもそこにいたのが本当にただの人間の子供だったら、カイン、あそこに置いて行こうとしなかったのでは?というのはある。
カインからするとオーエンはいくら人格が変わっても弱者と見做しきれない部分はあるんじゃないかな?とは思うんですよね。
言っちゃえば自分の目を奪った加害者な訳だし。
だからってカインに非があるとは私は思えないので、本当にここは最悪の運命の巡り合わせだったな、としか。
ともあれ、カインがオーエンを置いて他の人を助けに行こうとしたことが第2のトリガーとなって傷オーエンの攻撃性が発露してしまいました。
傷オーエンも魔法が使えたんですね…。
え?それ今後どういう意味を持つのかは分からないんですけど、とても重要な事実じゃないです???

 

ラスティカの「魔法の修行」、最高じゃありませんでした?
私ここ読んだ時めちゃめちゃ泣いたんですけど、何回読み返しても泣いちゃうんですよね。
西祝祭の時にも強く思ったのですが、ラスティカって自分より力のない相手に対する希望の提示方法がね、素晴らしいんですよ。
ただ一方的に教え諭すのではなく、絶望しそうなクロエを美しい言葉で励ましつつ、クロエが自分で暗闇の中の光を見出せるように導いて魔法使いとしての誇りまで奮い立たせている。
彼らもまた運命によって巡り合った師弟なんですよ。(突然のポエム)

 

※     ※     ※ 


15~17話感想、結構難しかったんですよね。
ドラマティックな展開が多かったのでそれに言及すると凄く長くなってしまって。
どうでもいい妄想も色々あったのですがあまりにもどうでも良くてかなり削りました。
とりあえず折り返しました!今日はここまで。